18冊目 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル





久しぶりの執筆です。言い訳をすると、この間全く本を読んでいなかった訳ではありません。Kindleで読んだり、Audibleで聞いたりはしていました。ただし、紙の本は確かに全く読んでいなかったというのが実情です。


最近は読書以外にも様々なことに取り組んでいました。コーチングを受講したり、10年ぶりに家庭用ゲーム機が手元に舞い込んだり、株式投資に本腰を入れたりして、読書の優先順位が下降の一途をたどっていました。


今回手に取った本についてです。もともとはよく聞くラジオ番組で「能力主義って実際イケてないよね?」という特集を聞いたことがきっかけで、このテーマに興味を持つようになりました。本屋でたまたまこのテーマに合致した本を手に取ってみました。


ラジオの特集では、能力主義といいつつも、金持ちの子供しか能力を高める教育を受けられないため、能力主義とは言えないよねといった語りがありましたが、この本はもう一歩踏み込んで能力主義について理解できました。能力主義社会においては、高卒以下の人間の自尊心が傷つけられ、拠り所をなくした結果、エリートに対する反感や不信感が増大していくそうです。これがトランプ大統領の当選やブレクジットを引き起こした一因とされているそうです。本書は主にアメリカに焦点を当てていますが、小池百合子がカイロの大学を出たことが話題になるのも、能力主義が浸透している証だと感じます。


アメリカンドリームについて考えてみましょう。アメリカに引っ越した移民が事業を興して夢を掴んでいく成功の物語を連想するかもしれませんが、実はアメリカンドリームでお馴染みのアメリカが意外にも流動性が低く、ヨーロッパや日本の方が流動性が高いという結果には驚きました。生まれる国や時代は選べませんが、比較的上層に上がりやすい国で過ごしていることはラッキーだと感じました。


各国民にとって自国の下層から上層への流動性が高いと思うか低いと思うかについてのアンケートも興味深かったです。アメリカではアメリカンドリームのイメージが根強いため、流動性が高いと思っている人が多くいる一方、ヨーロッパや日本に住んでいる人は自国の流動性はそこまで高くないと感じているようです。


個人的には日本について、一生懸命働いていれば必ず不自由ない暮らしが約束されている感覚は持ち合わせていません。逆にアメリカでは失敗しても再起することが許容されているイメージがあります。スキャンダルで叩かれた有名人が謝ったら割とすぐに許されるといった文化があるように感じます。例えば、タイガーウッズは一時は沈みましたが、現在は息子の良きコーチであり、良き父親として見られています。一方、日本では飲酒運転した有名人はその後テレビに全く出演しなくなることがよくありますね。


話が流動性からは少し逸れましたが、能力主義が蔓延する社会において成功者は自らの手で成功を手に入れたと傲り高ぶる一方で、そうでない者の自尊心が傷ついていく一面があることにも言及されています。


成功者は傲り高ぶると示されていますが、今までお金の勉強をする中で金持ちマインドについて触れる機会が結構ありました。その中でよく語られるのが「寄付」についてです。アメリカでは寄付文化が根付いており、金持ちは一定以上の富は社会に還元すべきと考えていると紹介されていました。成功は自分一人が頑張ったからではないし、持てる者は持たざる者を支援するものなのだと、そういった文化が根付いているとありましたが、この本を読んで金持ちの寄付マインドは綺麗事なのか、それとも古き良き金持ちのマインドなのか、考えさせられます。


これもまた本書から連想して思い出したことですが、以前大谷翔平がインタビューで、授かった大きな体を活かして野球で魅せていくことは、授かってしまった者の務めだと語っていたというエピソードがありました。当初は金持ちが寄付したがる発想と同じだと印象的でしたが、この本を読んでからは、彼がただ単に聖人なだけなのかも知れないと思っています。


これを書いている今もふと、スパイダーマンが頭をよぎりました。彼の物語もまた「力を持つ者の責任」をテーマにした作品だったと思います。現実社会の成功者には大谷翔平やスパイダーマンを見習ってほしい。


久しぶりに短期間で一気読みしたこともあり、思いついたことをワッと吐き出せた。ブログでこれを共有できて良かった。

このブログの人気の投稿

16冊目 世界最高の話し方 岡本純子

20冊目 冒険の書 孫泰蔵